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豊穣の空の彼方へ

とある事情で故郷に帰った。
帰郷の途上でショッキングなニュースが飛び込んできた。
一歳上の同郷の先輩が交通事故で急逝された、という連絡だった。

帰郷の最初の目的は、何のことはない、雪囲いの板を入れがてらバイクの慣らし運転を済ませるつもりだった。
だが、高速道路で休憩をしたときに、確認したメールの内容がにわかに信じがたいことを伝えていた。

簡単な昼飯を済ませるつもりで立ち寄ったサービスエリアの風景がいつもと違って見える。ヘルメットが手を滑り、乾いた音を立てて床に落ちた。

うつろな気持ちで乗り慣れないリッターバイクであと二百キロ以上走るのは危険だととっさに思う。
気持ちを抑えるようにして、エンジンを始動した。

高速道路を降りてすぐのところにあるスーパーマーケットで水引とペンを買って、誰も住むことのない実家に着いた。夕刻からの約束までまだ数時間ある。ご焼香の準備を済ませ、すでに遺骨となって実家に戻った先輩に会いに行った。

そのまま夕方の約束の場所まで4kmほどなので歩くことにした。秋の陽は背中に優しく温もりを降り注いでいた。

ゆっくりと時間は過ぎていった。

そしてこの時は二度と前の場所に戻ることはないのだ。

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by fnobotan | 2015-10-18 21:47 | 日記 | Comments(0)